撮影日記、雑感

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2008年12月29日(月)
180mmマクロ

今までマクロレンズはPENTAX DFA Macro 100mmF2.8だけしかもっていなかった。しかし近づきにくい昆虫の撮影には100mmでもまだ焦点距離が足りないと思うことがよくあるため、より望遠のマクロを欲しいと思っていた。等倍撮影のできるレンズとなると候補は2つしかなかった。
a) SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG
b) SIGMA APO MACRO 180mm F3.5 EX DG
タムロンも180mmをだしており、評判がよく、b)よりやや軽くて安価だが、残念ながらPENTAX用がでていない。当然180mmのほうが、より長いワーキングディスタンスがとれるが、重くなるし高価になる。
かなり迷ったが、100mmをもったまま買い足すんなら、150mmだと中途半端で、180mmのほうが使い分けがすっきりするだろうと思ったのと、イタリア在住で息をのむほど美しいネーチャーフォトのHPを公開しているJuzaさんがb)を絶賛していたため、b)に決めた。でも高い!幸いこの秋に、希望小売価格の半額の中古品をみつけて手に入れることができた。少し傷があるというが、素人目にはわからないし、写りに影響はない。
まだ短期間ではあるが、使ってみて大変気に入っている。とてもシャープでボケ味もよい。三脚必須という書き込みも見たが、カメラのボディ内手ブレ補正のおかげで、十分手持ち可能である。いちばん気になるのはもちろん重さ、大きさであり、山登りに携帯するにはよっぽどの覚悟がいりそう。手持ち可能とはいっても、やはり100mmマクロに比べると満足いく写真の撮れる確率はやや低いので、どうしても数多く撮る必要がある。特にここまでの望遠レンズとなると被写界深度が更に浅くなるため、ピント合わせに関しては極めてシビアであり、ぶれた写真よりピンボケの写真を量産することになる。また曇天ではISO感度を上げるか、ストロボ使用の頻度が上がる。まだ慣れていないためか、目的の虫をファインダーに入れるのに少し時間がかかることもある。また、オートフォーカスはちょっと使い物にならないのでマニュアルで合わせている。
目的によって100mmと使い分けることとなろうが、技術と筋力を鍛えて使いこなせるようにしたいものだ。
右はこのレンズで撮ったアオイトトンボとヤマトシジミ。
[09年1月22日追記]
smc PENTAX A*200mm F4 ED MACROというマクロレンズがあるようだが、現在ペンタックスのラインナップから外れており、入手は困難のようだ。

2008年12月20日(土)
空振りの告白

今年は思えばずいぶんと色々な所に行ったものだ。撮影記録をみると、いかにも期待通りの成果を上げているようだが、実はその裏で何回も空振りがあった。シーズンオフを埋めるために、そのひとつをここで披露しよう。
ヒヌマイトトンボという大変小さなイトトンボがいる。最も近年発見された日本特産のトンボである。私が学生の頃バイブルのように使った図鑑にはまだ載っていない。それだけあって産地は特殊な環境に限られる。ほとんどが汽水域、すなわち海水が混ざる水域である。
学生の頃からこいつがいるとされた場所を何度か捜した。神奈川県のTS川とか。しかし目撃できないまま、産地は次々と消えていった。
今年は少ない情報を頼りに2ヶ所まわった。東京のE川やT川。蒸し暑い中を歩き回ったがダメだった。一度はそれらしい影を目撃したが、大きさからいってアオモンイトトンボだったろう。こいつが見つからないとき、しんどいのは暑いうえに副産物が皆無な点だ。そりゃあそうでしょう、河口付近にいる蝶やトンボは知れている。おまけに水は汚く、悪臭すらするし、ゴミも多い。葦原の奥深くに隠れていることが多いとは聞いても、どこまで沈むか判らない汚いヘドロの中に入っていく勇気もない。
T川の河口付近は葦原の中を縫うように踏み跡がある。こいつを捜すには好都合である。それを辿ると必ずホームレスの仮小屋に行き着く。中には、庭があるなかなか立派な小屋や、鶏まで飼っている小屋もある。煮炊きの煙も漂う。声をかけられたおじさんに来た訳を話すと「昆虫の写真かい。昆虫は難しいよな。逃げちまうもんな。」と同情してくれた。
秋に栃木で会った愛好家にこいつの話をしたら、「それなら今年撮れたよ」といって、うれしそうにカメラの液晶で、胸に独特な可憐な斑紋をもつその写真を見せてくれた。そのときはフィールドであったため、地図が手元になく、そのポイントを探すキーワードを聞くしかなかった。来年はそれを手がかりに捜しに行こう。ちょっと遠いけど。冬は夢ばかりが膨らんで困ったものだ。

いずれも横浜市青葉区にて、12月20日
2008年12月13日(土)
まだがんばれ!師走のナッちゃん

いよいよ今年も残すところ半月あまり。
今日は小山田緑地で今年最後の散策をした。林の小径は落葉で厚く覆われ、坂道は滑りやすい。先週の昭和記念公園と同じく、時々フユシャクが飛ぶ(多分クロスジフユエダシャク)。紅葉も大体終わった公園では、柿とカラスウリの実の赤が目にしみる。
公園の外の西日があたる一画に、まだたくさんのナツアカネのいる場所を見つけた。オス、メスとも元気で、民家の西向きの壁に貼りついて、4-5匹で日向ぼっこをする姿もあった。食欲もまだ旺盛で、小さな虫が飛ぶと、さっと飛び立って見事にキャッチしている。来年早々暖かい日に、まだ見たことがない「年越し茜」を見つけにまた来ることにしよう。それまでがんばれ!

2008年12月6日(土)
フユシャクの世界

珍しく土日とも休める週末だ。
今日は日本列島にこの冬一番の寒気が入った。しかし関東だけは暖かい空気が残って、日中は散策にもってこいの陽気となる。
まだ何かトンボが残っているか知らん、ということで立川の昭和記念公園に出向く。トンボ池では擦れた羽のアキアカネが元気にテリを張っている。この分だと年越しも夢ではないのではないかなあ。
近くの林の一角で薄茶色の虫が飛んでいる。こんな季節に何だろうか。どうも蛾のようだ。よく見るとあちこち飛んでいる。フユシャクという冬出現する蛾がいたことを思い出す。何枚か写真を撮った後、木の幹をふと見ると1匹とまっている。これはいい被写体だ。ファインダーで覗くと、、あれ?蛾の上にもう1匹何かいる(写真右上)。カメムシの1種か何かだろうか。偶然隣にとまったんだろうな。しかしできれば蛾だけの写真も撮りたいな、と思い、そっと蛾の頭に指を触れて、場所を移動させようとしたとき、、何と繋がっているではないか!!ということは交尾中、ということだ。上にいるこのけったいな生き物がメス(写真下2枚)なんだろうか。確か羽が退化して飛べなくなった昆虫のメスって何種類かいた気がする。
とにかく写真を何枚か撮って帰宅後調べるとクロスジフユエダシャクのようだ。フユシャクの仲間は日本に36種いるという。いずれもメスの翅が退化して飛べないそうだ。更にオスもメスも口が退化して羽化してからは食事をしないそうだ。うーん、この変わり者の昆虫、冬の間の素材によさそうだな。でも全くのど素人にはどこに行けば会えるのか見当もつかない。

2008年11月23日(日)
今年最後の遠征は、、、

いよいよ本当にシーズンオフが近づいた。
最後に一花咲かせようと(シーズン終了をあきらめきれない悪あがきともいえる)今年最後(多分?)の遠征を試みた。
関東でこの時期のオオモノといえばこれしかない。ルーミスだ。房総半島南部に分布するあこがれの珍蝶。学生時代に採ったことがあるが(その頃はまだ採っていた。撮りたかったが近くに止まらなかった)、どうもその場所では最近少ないという。でも、そうかといって、他のポイントを知っているわけではない。
長いこと地図とにらめっこして、2ヶ所ほど候補地を挙げた。ダメでもともと、さあ出発だ。この時期、朝は遅い。初めて通るアクアラインの海ほたるSAで日が昇る。車を止めたのが9時ごろだったろうか。曇天で寒い。7℃ほどだ。そこから歩いて目的地に向かう。そこは食樹のウラジロガシもあり、ルーミスが飛んでもおかしくはない。カメラにストロボとレンズをセットして探し始めると人影が、、駐車場でも見かけた方だ。カメラを下げている。ブログでお名前は知っていたフィールドノートのtheclaさんだった。やはりここはルーミスのポイントだという。俄然期待が膨らむが、なかなか出てきてくれない。日が当たらないことには勝負にならない。
お話を伺いつつ待つこと約1時間、ようやく薄日が射し始めると照葉樹の林をチラチラと白っぽいルーミスが舞い始めた。数は多くなさそうであるが、次々と潅木に降りてくると、気温が低いので、止まるとすぐに開翅してサービスをふりまいてくれる。気温が低いせいか近づいてもなかなか飛ばない。それにしてもルーミスブルーの美しいこと。白っぽい裏面も格調高い。ついには地面に降りて吸水まで始めてくれた。
今年は何回となく撮影に出かけたが、今日ほどラッキーな日はなかったかもしれない。
帰り道では越冬前のホソミオツネン(写真右下)が枯れススキの間をたくさん飛んでいた。
theclaさん、お疲れ様でした。お会いしていなかったらすぐにあきらめて場所を変えていたと思います。ありがとうございました。次回行くときは脚立を持っていきます。
後日galleryにもUPします。

2008年11月14日(金)
冬に向かう伊那路にて

法事で長野の実家に帰った。今日は快晴。この時期にしては珍しく、南アルプスと八ヶ岳にはほとんど雪がない。中央道は紅葉の真っ盛り。恒例で?ちょっと寄り道し、お盆にミヤマシジミのいた天竜川河川敷に立ち寄ったところ、予想もしなかった光景を見ることに、、。
バイパスの工事とかで、河川敷はダンプカーが土ぼこりを巻き上げて行き交っている。
暗い気持ちになりつつも、気を取り直して静かな場所まで少し歩いてみることにする。しばらくはチョウもトンボもまったく目にしない。11月中旬で、しかも標高700 mだからもう初冬である。しかし私の訪問を察してか、何種類かの虫たちが今年最後のそれぞれの姿を見せてくれた。この時期は太陽の位置が低く、虫たちも体温を上げようと、翅を太陽光に垂直に向けるため、順光で翅全体にピントが合うように撮影しようとすると、どうしても自分の影が邪魔になり撮影が難しい(月食と同じ位置関係になる)。
モンキチョウは翅も擦り切れ、哀れな姿であるが、残り少ない命に最後のエネルギーを補給する姿に感動した。ここは逆光で撮ってみることに。今年はあまり見る機会がなかったアキアカネもそろそろ見納めだろう。
再認識したのがベニシジミの秋型の美しさ。どう見ても羽化して間もないと見られる個体の後翅の青い斑紋は、はっとするほどきれいだった。
元気に飛び回っていたのがオツネントンボ。このトンボは成虫で越冬するため元気なのは当然だ。来春まで寒さを耐え、春先に交尾と産卵という大仕事が待っている。人生(虫生?)これからである。それでも寒いのか、小川にかかる板の橋にとまったときには、暖まった板から熱を吸収しようとして、ぴったりと板に張り付くように体を密着させていて笑ってしまった。
来年再訪する機会があるかわからないが、ミヤマシジミが何とかこの周辺で生き延びていてほしいと願いつつ後にした。
他に見かけた蝶:ヤマトシジミ、キタテハ、ツマグロヒョウモン(何と!)、ヒメアカタテハ
他に見かけたトンボ:ナツアカネ

2008年11月1日(土)
陽だまりのトンボ

今日は木枯らし1号が吹いた。確かに風は強かったが、あまり寒くない木枯らしだった。職場は今日が学園祭で、この秋一番と思われる晴天の下、ステージも盛り上がっていた。
帰りに小山田緑地による。着いたのは午後1時過ぎ。11月ともなると太陽が低く、日のあたる場所は限られる。しかし陽だまりにはアカトンボ(ナツアカネ、マユタテアカネ、コノシメトンボ)とオオアオイトトンボ(写真右)が多数見られた。前回たくさんいたシオカラトンボは完全に姿を消した。
どれも普通種なので、広角での撮影と顔のアップを撮ってみた。今年はやけにナツアカネ(写真下2枚)が多いが、大写しにすると、改めて真っ赤な顔が美しかった。「アカトンボ羽をとったらトウガラシ」という一節を思い出した。

2008年10月19日(日)
フジバカマに来るチョウ

10月後半ともなると、だいぶチョウもトンボも少なくなってきた。
しかし、石神井公園の三宝寺池の周りに生えるフジバカマには、よっぽど甘い蜜がでるのか、まだ多くの昆虫が訪れている。今日はストロボを使って、この花に来るチョウの飛翔写真に挑戦した。ちょっと暗めであったり、微妙にピントがずれたりしているが、なかにはウェブに載せる程度なら、何とか耐えられるカットがあった。全てトリミングしており、一部はフォトショップで加工している。

右:モンシロチョウ♀
下:キチョウ♂
右下:ツマグロヒョウモン♂

いずれも外付けストロボAF-360FGZを使って1/1000sec, ISO400で撮影。レンズはSIGMA 180mm MACRO。

2008年10月14日(火)
幼虫その後(3)

玄関先のホトトギスの茎で蛹になった2匹のルリタテハは、もうだめかと思っていたが、12日の日曜日と今日、無事羽化した。2匹とも同じ日の9月27日に蛹になっているので、蛹化からそれぞれ15日と17日かかって羽化したことになる。羽化前日あたりから蛹が黒っぽくなり、白く光る白斑が青味がかってきたが、模様が透けて見えるといった感じはなかった。
多くのブログをみると蛹の期間は1週間余りのことが多く、長くても15日のようであるので、我が家に住みついたルリタテハはずいぶんとのんびり屋さんだったようだ。特にこの期間、気温が低かったわけではないので、理由は良くわからない。
かわいくもなんともない幼虫や蛹であったが、一月も居つくと親しみが湧いてきて、やきもきしながら羽化を待った。そんな気も知らないで2匹とも私の留守に羽化してしまい、帰宅すると既にいなくなった後だった。この親の心子知らずめ(大袈裟かな)。
幸い二日とも家内は在宅だったので、コンデジで撮ってもらう。それでも羽化の瞬間はあっという間らしく、気付いたときには翅もほぼ伸びきっていたということだ。羽化は9時から11時の間ということで、思ったより朝寝坊だ。
このまま越冬した成虫は、来春また我が家のホトトギスに産卵に戻ってくるんだろうか?まさかサケでもあるいまいしね。でも約半年後にこのあたりを飛び回るルリタテハがいたら、成長した我が子を見るような気がするのかも。

蛹を茎ごと屋内に移せば、もっと詳しい観察もできただろうが、なるべく自然状態の写真を載せたかったのでそのままにした。

10月4日撮影
10月12日撮影
2008年10月12日(日)
ヒメアカネの湿地

連休中日は風が少し強いが、まあまあの天気となる。
今日は1時間ほどで行ける狭山自然公園にでかける。駐車場の少し先に湿地がある。遊歩道を進むと小さな小さなアカトンボが飛んでいる。今まで見たアカトンボの中で最も小さいんではないだろうか。近づいてよく見ると、やはりヒメアカネだ(写真上)。マユタテアカネによく似るが、大きさと、翅胸前面の模様、それと腹端の上付属器の形で区別可能だ。マイコアカネと大きさが似るが、成熟オスの顔面は真っ白であり、青味がかることはない。
それにしてもヒメアカネの多い湿地だ。最優先種である。この他にもマユタテアカネ、コノシメトンボ、ネキトンボ(写真下)がみられた。別の湿地では、オニヤンマの他に、カトリヤンマと思われるヤンマが何回か飛んだが、止まってくれなかった。今年は最普通種のはずのアキアカネがやけに少なく感じる。今日もそれらしき個体を遠くで1頭目撃しただけだった。
蝶では特にテングチョウが多かった。しきりに吸蜜している。これから冬を越すために栄養を蓄えているんだろう。
今日はこのように小さなアカトンボの飛び交う中、落ち着いて散策できた秋の良い一日だった。
ヒメアカネの撮影に夢中になっていたら腰のあたりがむずむずする。携帯の振動だ。嫁さんからの電話だ。親戚に高齢の伯父伯母がいるので、このようなときはちょっと胸騒ぎがする。切れた電話をかけなおすと、家のルリタテハが羽化したという。実は蛹化して2週間以上経つので、ほとんどあきらめていたのだが。コンデジで撮ってもらうように頼んでおく。
家に帰ると既に飛び去った後だった。もう1匹は明日あたりだろうか。

2008年10月5日(日)
普通種を撮る楽しみ

シーズン中は、あまりよいこととは思わないが、何とか希少種を撮ろうと躍起になってしまう。そんなときに普通種が飛んでいても、なかなかカメラが向かないものだ(ごめんなさい)。
でもシーズンオフとなり観察できる種類が少なくなると、そんなチョウ、トンボにもファインダーを向けるようになる。じっくり撮ってみると、それもなかなか楽しい。がつがつしないでゆったりとした気分で楽しむことができる。
右は今日石神井公園で撮ったもの。オオアオイトトンボは都会の池でも時々目にするが、緑の金属光沢がとても美しい。
スジグロシロチョウはキツネノマゴの花で吸蜜していたが、あわただしくすぐに飛び立つので、花に止まっているところにファインダーをもっていき、飛んだ瞬間にシャッターを押したら、多くのNGの中に何とか見られるものがあった。
その他ヒカゲチョウの産卵にも遭遇し、カメラを向けたが間に合わなかった。
今日は天気予報どおり午後から曇って、6時過ぎから雨が降ってきた。

2008年9月28日(日)
シルビアの河川敷

マダラヤンマ遠征で今年のチョウとトンボの遠出は打ち止めにしようかと思っていたら、金曜日にお会いしたF先生からシルビアシジミのポイントを聞いてしまった。
まずい、やはり来年まで待てなくなり衝動遠征することに。シルビアシジミは、我が家の玄関先にいっぱいやってくるヤマトシジミと、黒い斑点の位置が1ヶ所違うだけだ。そんなチョウを撮りに山梨まで片道130kmも遠征なんて信じられないかもしれないが、絶滅危惧種に指定され、蝶仲間には蝶(超)人気があり、乱獲のうわさも絶えない。
教えてもらった河川敷に着く。曇天で肌寒い。ちょっと蝶には酷な日かな。秋の休日を、ジョギング、サイクリング、犬の散歩と好みのスタイルでくつろぐ人たちと時々すれ違う。
すぐに小さなシジミが止まっているのに気付く。でも近寄ると残念、我が家にもいるヤマトシジミだ。キアゲハやモンキチョウも気温が低いせいか、近づいても逃げないので、普段なかなかできない広角でのマクロ撮影を楽しむ(写真上:キアゲハ)。その後ツバメシジミ、ウラナミシジミ、ベニシジミと出現するが、肝心のシルビアは出てこない。
これ以上先に行っても同じだろうと、戻り始めたとき、また小さな蝶が飛び出す。もしかして、と思って近づくと、やった!シルビアシジミだ。復路はなぜか何回もシルビアを見た。慣れてくると飛んでいても少し小さいのと、やや暗い色合いのため何となく当てることができるようになった(と思う)。
でも全く日が射さないため、すぐ止まってくれるかわり、翅は閉じたままで、翅表の青藍色は撮れなかった。でもそれは次回の楽しみにとっておこう。目的を果たし、雲も厚くなってきたので、のど自慢が始まる頃にはもう帰路についていた。

写真中:ヤマトシジミ
写真下:シルビアシジミ
いずれも今日撮ったものです。向きが逆なのでわかりにくいでしょうが、赤丸で囲った黒点の位置が違います。そのほかにシルビアシジミの方が全体にやや暗い(写真は強調されているが)。

2008年9月27日(土)
幼虫その後(2)

今年初めての冬型の気圧配置になり、岩手山や立山からずいぶん早い初冠雪の便りが届く。東京の空気も一晩で入れ替わり、ぐっと涼しくなった。
さて、昨夜遅く帰宅したときには確かに定位置にいたはずのルリタテハの幼虫が、今朝見るといない。どこかで蛹になっているはずだ。
家内と捜索したところ、間もなく2匹とも見つかった。1匹はホトトギスの下のほうで、もう1匹は隣のサザンカの下枝で前踊になっていた(写真上)。たいした移動はしてなくてよかった。終齢幼虫の頃は地上70-80 cmのところにいたのに、蛹になるのは地上たったの10 cm40 cmの暗い場所だ。低い場所のほうが確かに枝や葉に隠れて見つけにくい。何せ、羽化するまで全く移動できなくなるわけだから、蛹化する場所はクリティカルである。それにしても終齢幼虫の気味が悪いほどの大きさに比べてずいぶん小さくなったものだ。
午後には蛹となったが、その瞬間は捉えることができなかった(写真下)。タテハチョウの蛹はアゲハチョウなんかと違って腹部の先端を上にして逆さにぶら下っているタイプで垂蛹と呼ばれる。
順調に行けば8-9日で羽化ということになりそうだ。ここ数日で体内の大改造が行われることになる。寄生蜂にやられてないといいんだが。

2008年9月23日(火)
斑蜻蜒遠征

日本一美しいトンボは?もちろん好みの問題であろうが、マダラヤンマを挙げる人は多いと思う。胴体の青い星のような斑点と、オパールのような複眼は間近で見るとため息が出るほど美しい。
私がこのトンボを初めて見たのは学生の頃、実家のすぐ近くにある池であった。キトンボやネキトンボを撮っていると、見たこともない小さくて青い斑点のあるヤンマが目の前をよぎった。初めは幻か何かと思ったが、何回か視界を横切るのを見て、全速力で自宅にとって返し、10分後には1匹を補虫網に入れていた。やはりひょっとして、と思ったマダラヤンマだった。
その日のうちに、卒業した高校でトンボに詳しい生物のI先生に報告した。かくしてここがマダラヤンマの当時日本南限となる新産地となった。その後数年は、秋になるとこの池でマダラヤンマの発生が続いた。しかしある年、しばらくぶりに帰省してこの場所に行くと、池は埋め立てられ跡形もなくなっていた。ちょっと悲しい思い出である。そこには考古博物館ができたが、どうしても訪れる気になれず現在に至っている。
今日はHさんを誘って東信のマダラヤンマで有名な池に遠征した。
8時過ぎに到着すると、早くもひとり望遠マクロを持った同好の志がいる。30年ぶりに会うトンボも元気に縄張りを張っている。
ここでは今日、マダラヤンマの観察会が開かれるのだという。しばらくすると大勢の人がやってきた。我々も一緒になって保護団体の人の解説を聞く。今年は保護活動が実り、昨年の2倍は発生しているという。それでも夕方になると採集者がやってくることがあるのでパトロールの必要があるらしい。採集したい気持ちはわからないでもない。新産地の報告や、近似種との区別には採集が必要なこともある。実際は、採集よりも生息地の環境の変化がトンボの絶滅につながることが多いこともわかっている。
しかしトンボは標本にすると、生きているときの美しさは完全に消え失せる。時間がたつと茶色に色褪せるだけだ。デジタル化の進んだ今日、実物より写真のほうがいつまでもトンボの美しさを残すことができる。是非、採るかわりに撮る、あるいはいったん採集しても細部の写真を撮ってから放していただきたい。売るための採集はもってのほかである。
観察会の人たちが去ったあとも、昼過ぎまで粘って多くの写真を撮ることができた。特にHさんの見つけてくれた個体は、道沿いの葦の枯葉で長いこと休んでおり、半分冗談で持参した三脚を使ってじっくりと撮影することができた。
このように多くの地元の人にかわいがられているマダラヤンマは幸せだ(女性と同じで美しいと得をすることもあるのかも)。ここまで大勢に保護の機運を広めた方に敬意を表したい。
帰りの関越道の上にはいわし雲が広がっていた。もう秋本番だ。

Hさんを背景に飛ぶ(笑)マダラヤンマ
2008年9月21日(日)
幼虫その後

我が家の毛虫君達は、その後も2匹とも元気。雨の日は葉の裏に隠れているが、止み間に葉を食べている。大きさは4 cmには達しているんではなかろうか。
ホトトギスは園芸植物として人気があるからか、検索するとルリタテハの幼虫が登場するブログはいっぱいある。それらを読んで勉強するといろいろなことがわかる。
まず、この写真では棘が白い(本当の先っぽは黒いが)。これは終齢幼虫の特徴らしい。1週間前の写真では確かに黄色い。もうひとつ、食事中以外はほとんど体を丸めている。この理由はわからないが、丸めたほうが目立ちにくいからなのか、それともハリネズミのように棘で身を守っているのか。
私が気付いた点は、成長するにつれて蕾のすぐ近くから少しずつ下に移動すること。これは、上の葉ほど新しくて柔らかいので、若い幼虫が食べやすいのだろう。この習性がわかれば幼虫のいる株は一目瞭然である。1本の茎が大体1匹の幼虫を育てるくらいの葉をつけているようだ。また皆さんのupした写真を見ると、同じ終齢幼虫でも色の個体差があることがわかる。赤っぽいやつや黒っぽいやつなどなど。
このまま無事なら1週間以内に蛹になりそうだ。食草の茎で踊化してくれれば写真が撮れるんだけど、旅にでるようだとちょっと捜せないかも。

2008年9月15日(月)
黄金色の秋に黄金色のチョウとトンボを

中秋の名月もいつの間にか過ぎた。もう秋本番である。でもまだまだその気になればチョウとトンボは観察できる。中には秋に数が増えるチョウもいるし、トンボは秋にしか見られないものや、秋になってきれいに色づくトンボも多い。
今日は久しぶりに家内を誘って、トンボの超貴重種を目当てに栃木県のある自然公園へ出かけた(これだけで、ああ、あそこかと判る人は相当重症である)。超貴重種とは日本一美しいともいわれるマダラヤンマと、全身黄金色のアカトンボ、オオキトンボである。いずれも市の天然記念物に指定されている。
あたりは黄金色に色づいた水田が広がっている。目的地に着いて池の周りを歩き始めると、まずはマイコアカネが出迎えてくれた。特別珍しいわけではないが、なぜかお目にかかるのは始めてである。真っ赤な胴体と、舞妓さんを連想させる淡青色の顔がかわいい小さなアカトンボだ。
地元のトンボ屋さんも何人か来ている。皆知り合いのようだ。この辺りにマダラヤンマがよくいるというポイントでしばらく粘ってみたが、遠くを、もしかしたらそうかも、という影が飛ぶが、特徴ある青い斑点は逆光で確認できず、写真撮影どころではない。ほとんど日が射さないのもよくないのかもしれない。
あきらめて場所を移動する。キチョウがたくさん飛んでいる。中に小さめで、飛ぶときちょっと褐色調のやつがいる。どうも明るいところより茂みの中が好きらしい。なかなか止まらないが、ひょっとして、と思ってつけていくと草むらの奥にようやく止まった。後翅の褐色の線条はツマグロキチョウの証拠だ。この蝶、最近は減少著しく、絶滅危惧種に指定されているくらいだ。あたりを捜すと、何と奥のほうで交尾中のペアもいる。手前の邪魔な草を家内にそっとどけてもらい写真に収めることができた。
オオキトンボはいなかったが、まずまずの成果に、さあ引き上げようかとしていたら、やって来たばかりのトンボ屋さんが話しかけてきた。オオキトンボのことを話すと、何と「ポイントはここじゃないですよ。」といわれる。再び希望をもってその場所に向かう。あたりにはキンエノコロが淡い日差しを浴びて時々オオキトンボと錯覚する。10分ほど歩いただろうか、数メートル先の葉の上に淡い金色のトンボが止まっている。絶対キンエノコロではない。細心の注意で近づいてシャッターを押す。このトンボ、思ったより協力的で、そう簡単には飛ばない。飛んでも少し先に止まってくれる。遠来の客に大サービスであった。しかし2匹見ただけで、決して多いわけではなかった。
昨日も採集者がいたらしい。「たくさんいるんなら少しぐらい採集してもらって構わないが、このように少ない種類は採らないで欲しい。」と管理人さんがおっしゃっていた。マダラヤンマ以外は目的を果たし、ツマグロというおまけも付いた楽しい一日だった。貴重なトンボが保護されている重要な公園だ。不採算施設などといわず是非是非守ってほしい環境である。

2008年9月14日(日)
玄関先の届け物

詳しくはまたの機会に述べるが、望遠マクロの中古を買ったので、玄関先で試し撮りを試みる。庭などと呼べるようなものはないし、咲いているものは貧弱なバラ程度。その他にホトトギスが植えてある。このホトトギス、毎年株が大きくなってきた。蕾も膨らんで今年もたくさん咲きそうである。
そこで色づいてきた蕾でも撮ってみようとカメラを向けると、、、あれ?小さな毛虫が付いている。あっ、ここにもいる。いかにも毒針のような棘がある。まてよ、確かルリタテハの食草がホトトギスだった。もしかしてと思い、ネットで調べるとやはりルリタテハの幼虫のようだ。触ってみて何ともなければイラガやドクガの幼虫ではないが、自信がないので遠慮した。時々殺虫剤を散布してたが、そういえばここ1月くらいサボっていた。
かなり遅めの若齢幼虫だが、10月に羽化してそのまま冬眠するんだろう。確かに杉並でも春先何回かルリタテハを見かけた。いつの間にか我が家に飛来して産卵したんだろう。
近くに他の株はないので放浪の旅には出ないだろうし、本当に2匹だけなら(ほんとかな)、十分養える株の大きさだ。鳥や猫に食べられず、寄生蜂にもやられなければ、しばらく観察できそうだ。でも大きくなるにつれ、益々グロテスクになんだろうね。

2008年9月6日(土)
石神井公園記念庭園

石神井公園といえば石神井池と三宝寺池が公園の要である。ボートの浮かぶ石神井池は自然観察には向かず、三宝寺池ということになる。池を巡る遊歩道を進むと、ここが都会であることを忘れさせてくれる風景に浸ることができる。しかし池の水際までは近づけないところが多く、また散策する人が大変多いため、トンボの観察にはストレスを感じることも多い。
石神井公園の東南の端に記念庭園と呼ばれる一角がある。何の記念なのかは知らないが、ここには小さな池が有り、井戸から湧き水が流れ込んでいる。池の周りは樹木に深く覆われており昼なお暗い。その樹木を縫うように、緩やかな坂道の石畳の園路が続いている。
ここは公園の他の場所と違って、とても静かで、たまに年配の人たちが散策に訪れるくらいである(そのかわりヤブカが多い!)。今日は午後から晴れたので、蒸し暑い中、ここを訪れた。あたりはツクツクホウシの声で満たされていた。水際には、木陰の多い池を好むアカトンボのリスアカネが何匹も縄張りを張っていた(写真上)。またモノサシトンボの連結と交尾も観察することができた(写真下)。このトンボ、白と黒のモノトナスな模様であるが、白が個体によって薄く緑がかっていたり、水色っぽかったりで、とても魅力的である。
何度か、やや小型のヤンマが飛んだが、残念ながら撮影どころか種の確認もできず、楽しみな課題が残った。

2008年8月31日(日)
ついにここにも!アカボシゴマダラ

8月の最終日にして、しばらくぶりに夏らしい天気が戻る。
もしかしたら面白いヤンマでも見られるかと思って、午後から自転車で石神井公園へ。
思いがかなわず止めておいた自転車のところに戻るとムラサキシジミが飛んでいる。開翅写真を狙うがかなり擦れている。飛び去る先に目をやると何とアカボシゴマダラが。
いよいよここにも出現したか。初めての写真が撮れても喜びより戸惑いのほうが強い。蝶に詳しくない人のために、その理由を簡単に説明しよう。
もともとこの蝶は日本では奄美大島と徳之島にしかいなかった。学生に頃、奄美に行ったことがあるが、一番の目的はこの蝶であった。ただここにはハブも生息するので気をつけねばならない。木に登って採ろうとしたとき、ハブもいて首を咬まれて命を落とした採集者がいる、なんていう恐ろしい話も聞いていたんでね。
話がそれたが、私が神奈川県藤沢市にアカボシがいると最初に聞いたのは確か4年前だ(実際は1998年から見つかっているらしい)。斑紋の特徴から中国大陸由来と推定され、何者かが誤って、あるいは故意に放蝶したと考えられている。その後、瞬く間に分布を広げ(複数の場所で放蝶された可能性もあるが)、最近では神奈川県下だけでなく、少なくとも埼玉県、東京都でもみつかっている。
近似種のゴマダラチョウや国蝶オオムラサキと食樹(エノキ)が競合するため、影響が心配されているが、まだ影響は明らかになっていないようだ。仲良く共存できるといいんだが、同じ人間同士ですら戦争で殺し合っているからなあ。

2008年8月30日(土)
豪雨の合い間に

お盆明けから天候がおかしい。1週間ほど梅雨寒のような気候が続いたと思ったら、今度は毎日のように猛烈な雷雨がやってくる。829日早朝には愛知県岡崎市で1時間雨量146mmというとてつもない豪雨を記録したが、町田市の図師町でも同じ頃1時間110mmを記録している。図師町はよく行く小山田緑地のすぐそばである。
今日仕事帰りに立ち寄ってみることにした。着くころまた雨が降り出したため、駐車場で仮眠する。15分程うとうとしただろうか、雨が止んだ。
園内の草はいたるところで横倒しになっており、流れ出した土も当時の雨のすごさを物語っている。また、いつもはないところに小さな流れが残っており、まだ大地が染みこんだ水分を吐き出しきっていないようだ。池はもやに煙って、何もしなくても眼鏡が曇るほどの湿気である。近くの水田脇の小川には大量の草木が流れ着き、川幅の狭まった所に堆積しており、委託を受けた業者がトラックに回収していた。
次第に日も射すようになって、結構な数の虫たちが飛びだした。普通種ばかりではあったが、2週間ぶりのフィールドであったため、結構楽しめた。家に着く頃はまた雨が強まり、大雨洪水警報が発令されていた。しかしこう頻繁に警報がでると何とも思わなくなってくるよね。
今日のチョウ:ダイミョウセセリ、キマダラセセリ(写真上)、イチモンジセセリ、オオチャバネセセリ、キチョウ、ムラサキシジミ、キタテハ(写真下:このオスはしばらくこのようにメスに抱きついていたが結局交尾に至らず諦めて飛び去った)、ヒメウラナミジャノメ、ジャノメチョウ
今日のトンボ:コオニヤンマ、オニヤンマ、タカネトンボ?、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、コシアキトンボ

2008年8月17日(日)
お盆休みの2品

昨日はお寺参りや庭の草取りなどで忙殺された。今日は帰京する日であるが、このまま帰るのはもったいない、という昆虫熱の症状が再発し、またも息子を説得し、2箇所だけ短時間の立ち寄りの許可を得る。
まずは実家から車で15分ほど山に入ったところにある神社である。小学生の頃から数え切れないほどここを訪れている。以前は、今頃行けばゴマシジミやホソバセセリに必ず迎えられたものだが、もうその面影はない。しかし神社脇の清流に沿って、昔どおりオニヤンマが飛んでいる。何度もオスの飛翔写真を狙ったが、証拠写真程度のものしか取れなかった。ホバってくれれば撮れるんだが。帰ろうと思った頃、近くの葉陰にオニヤンマの1頭が消えた。静止写真でも撮れればと思って注意深く近づくと、そこにも小さな流れがあり、メスが産卵中であった。日本一大きなトンボの、その中でも一回り大きなメスが、バシャッ、バシャッ、と水面を叩きながら繰り返す産卵はド迫力であった(写真上)。
2箇所目はミヤマシジミのいる川辺である。この蝶も以前は、実家から数分も歩けば会うことができる普通種であったが、全国的に減少著しい蝶である。まだ、伊那市付近の天竜川沿いに産地が残っていると聞き、ポイントを知らぬまま適当な場所に車を止めた。堤防に沿って食草のコマツナギが点々と生えているので期待しながら歩く。時々シジミチョウは目にとまるが、ウラナミシジミとツバメシジミばかりである。30分近く探してやっとのことミヤマシジミのメスを1頭だけ探し出せた(写真下)。
もっと時間をかけたかったが、午後
3時をまわり、にわか雨が降り始め、風も強まって撮影どころではなくなったため、続きは次回ということで退散することにして、渋滞覚悟で中央道に入った。
帰り着いた東京は秋の始まりを思わせる涼しさだった。

2008年8月15日(金)
残暑の北八ツに黒いアカトンボを追う

お盆に実家へ帰る途中、ちょっと(かなりだが)寄り道して北八ツの某池へ黒いアカトンボを撮りに行く。アカトンボっていったいどんなトンボだろう。「夕焼ーけ小焼けーの赤とんぼー♪」という歌を思い浮かべる人が多いだろう。日本の秋の風物詩の代表であるが、実は「アカトンボ」という種類のトンボはいない。赤いトンボならアカトンボでいいじゃないかという考えもあるだろうし、実際それを否定する理由はない。しかし一般的にはアカネ属(Sympetrum属)に属するトンボをアカトンボと考えるトンボ屋さんが多いと思う。そうした場合に問題になるのが、赤くならないアカトンボが何種類かいる点である。
北海道と本州高地に限って分布するムツアカネは成熟しても赤くならない。それどころかオスは成熟すると黒くなるのである。私は学生の頃、北海道東部の標茶付近でこのトンボに会ったきりであったので、このトンボが多産するという北八ツのA池に立ち寄ることにした。
A池は標高約2100m、峠の駐車場から1時間余り歩いた所にある。ところが駐車場に車を止め、いざ出発という時、息子が小さなトンボがいるというので見てみると、何とそれがムツアカネであった。歩道に入ってすぐにある小さな池にもチョロチョロとムツアカネが飛んでいる。「なーんだ、これならわざわざA池まで行かなくてもいいじゃないか。」一瞬そう思ったが、せっかくだから往復2時間半ほどかけて散歩がてら行ってみようということになる。
歩道は次第に深い針葉樹林帯に入り込み、時に赤いリボンを頼りに進む。途中、荒廃した林道を歩く部分では、道沿いにキベリタテハ、エルタテハが飛ぶ。
樹林が突然途切れ、明るいA池に飛び出る(写真上)。そこは正にムツアカネの天国であった。水際では信じられないほど多数の連結したペアーが産卵していた(写真下)。時々オオルリボシヤンマも産卵にやってきた。あたりは駐車場からは想像できない静寂が広がり、途中も含めて会った人は10人程度の、心洗われる高地散歩であった。

2008年8月10日(日)
立秋の富士山麓

暦の上ではもう立秋を過ぎ、早くも秋だ。この季節になると観察できる蝶はだんだんと限られてくる。
今日は以前F先生に教えていただいた静岡県にあるクロシジミのポイントに行くことにする。ちょっと遅いので来年にしようか迷ったが、珍蝶クロシジミの誘惑には勝てない。私の育った飯田の近辺では、私の知る限り産地はなかったし、東京近辺にあった産地は全て消滅した(と思う、残念ながら)。だから会いたい蝶のトップグループにはいっている。
9時前にポイントにつくと、すぐに大きめの黒いシジミがよぎったが確認できない。それっきりそれらしい蝶は一向に現われなかった。そのかわり、いろいろなアゲハチョウが湿った土に吸水に来る(写真上:ミヤマカラスアゲハ)。時間も10時をまわり、やはり時期が遅すぎたか、それともここからも消えたのかとがっかりしながら駐車場の方へ戻っていくと、採集者が暇そうに道端に座っている。もし撮影できていたら、気付かないふりをして通り過ぎるところだが(ポイントを教えたくないからね)、今日はちょっと事情が違うので、すごすごと近づいて何気なく聞いてみた(えらく勝手だね)。「クロシジミいますか?」。すると「ええいますよ。あのあたりとあのあたりの藤の木なんかの周りに飛んでますよ。」
確かにそこに行くと結構な数のメスがチラチラ飛んでいるではないか(写真下)。多分最初に見たのもクロシジミだったんだろう。このネットマンは結構親切で、「ここにもいますよ」と教えてくれたり、撮影が終わるまで採集を待ってくれたりした(それでも写真に撮った後、すぐに網に収まるのはあまり見たい場面ではなかったが)。

F先生が行ったのが5年前ということで心配したが、一応ここは健在のようだ。ただ発生はかなり狭い範囲であり、観光客で結構にぎやかな場所である。最盛期には採集者はもっと多いことだろう。次々と産地が消えていくなか、何とかいつまでも世代を重ねてほしいものである。来年は暗紫色に光るオスを撮ってみたいものだ。F先生、情報ありがとうございました。

2008年8月2日(土)〜4日(月)
高山蝶の棲家へ(3)

今年もHさんと山登りを計画した。
今年は唐松岳と五竜岳。月曜日に休みをとり、2泊3日と、十分すぎる時間的余裕をとった。理由は蝶などの写真を撮るためと、悪天候の可能性も考えたからだ。登山と蝶の写真撮影は両立しないことが多く、普通どちらかだけにしているが、今回の結果は期待以上であった。今回に限って「二兎を追う者、二兎ともに得る」であった。さて、成果とは。

ベニヒカゲは目撃したのみであったが、クモマベニは稜線付近のお花畑に結構の数が飛んでいた(写真上)。もう30年も前に南アルプス三伏峠で見た無数に群れ飛ぶ姿とは程遠いものの、高山植物のお花畑とこの蝶は実に良く似合う。
想定外でうれしい驚きだったのが「ハイマツ仙人」ことタカネヒカゲだ(写真中)。北アルプス一帯に分布するので、いても不思議はないが、この山域で撮った写真を見たことがなかったため、いるとは思っていなかった。場所は詳しく書けないが、かなりの数が飛んでいた。ただ天気が良すぎて、気温も高かったため、敏感で、なかなか近づくことができない。また急斜面で危険な場所も多く、指をくわえてみるだけのことも。結局1シーンのみを何枚か撮れただけだが、初対面でもあり満足。ハイマツにとまっているところだから、ニックネームにもぴったりだからね。
それと、もう一種、会えてうれしかったのがゴマシジミ。ゴマシジミはかって私の育った飯田地方では、ちょっと山に入るとよく見ることができた大型のシジミだ。しかしいつの間にか、そのほとんどの場所から姿を消した。今回見たのは、そんな貴重なゴマシジミのなかでも、北アルプス高地産に特有の小型で黒いクロゴマ、蝶仲間は山ゴマとも呼ぶ(写真下)。撮影した標高は2100メートルを超えており、立派な高山蝶である(といって勝手に認定)。飛んでいるとき、この少し大きめの黒っぽいシジミが何者か見当もつかなかった。高山蝶ばかり考えて、この蝶がいることを念頭に入れていなかったからだ。
下山の日は天候が一変した。途中から大雨となり、雷が鳴り始めた。痩せた稜線の通過はいつピカッとくるかとても怖かった。
山の写真は山行記録を参照(時間ができたらアップします)。Hさん、お疲れ様でした。

2008年7月21日(月)
所沢の林、盛夏

先日、仕事仲間であり蝶仲間であるF先生から、所沢の先生のフィールドで、今年もジャノメチョウが見られるようになったとの連絡をいただいた。今日はそのフィールドを案内していただくことに。東京にこれだけ近いジャノメチョウの産地は貴重である。
まだとても広い雑木林が残っており、そのはずれの、今は使われていないテニスコートにススキが繁っている。ここにたくさんのジャノメチョウが発生している。時期がちょうど良かったらしく、交尾の写真まで撮ることができた。
エノキの林ではたくさんのゴマダラチョウが飛んでいた。ここはまだ幸い(といっていいんだろうが)アカホシゴマダラは進出していないようだ。林の中で小さい赤とんぼが飛んでいる。よくみると東京周辺では珍しいヒメアカネであった。
ここは平地産のゼフィルスは大体一通りみられるようだし、運がよければミスジチョウとも会えるという。今から来年のその季節が楽しみである。
半日時間を作って案内いただいたF先生、どうもありがとうございました。

2008年7月13日(日)
高山蝶の棲家へ(2)

今日は田代池(写真上)でカオジロトンボを撮るのが目的。といってもタカネキやオオイチがアントレならカオジロはデザートのようなもの。今回ダメでも他にも標高の高い湿原に多くの産地があるから。
家内はパスするということで、息子と二人で行くこととする。家内がいないと歩くのが早いこと!途中暗い樹林帯でニホンザルの群れと遭遇。こちらを恐れるでもなく、威嚇するでもなく、全く無視を決め込んでいる。こんなに野生の猿に近づいたことは初めてだ。恐る恐るストロボをたかせていただいて何枚かカメラに収めるも動じる気配がない。ヒトもそうだが、サルも子供はかわいい。ずっと母親の乳首を離さない(写真中)。あんなに引っ張られて痛くないのかな。
カオジロトンボは息子が見つけてくれた(写真下)。やや磨れているが数は多い。横になったりして写真を撮っていると、観光客は「何かいるの?」「トンボがいるみたい。」といって通り過ぎていく。息子は少し離れた所で他人のふりをしている。気持ちは痛いほどよくわかるけど、、、

今回は写真撮影の難しさを改めて痛感した。満足のいく出来のものがとても少ない。特に露出が
難しい。オオイチのような黒い蝶は普通に撮ると黒潰れしてしまう。初歩的テクなんだろうが、とっさに判断することが出来ないのだ。銀塩カメラと違ってフィルム代を気にせず何枚でも取れるけど、漫然と撮っていても上達できなさそうだ。
高山蝶は本州に9種、大雪山に5種分布する。「高山蝶」と聞くだけで、蝶屋の胸をキュンとさせる憧れの蝶達。何度会っても新鮮だ。珍しいという先入観もあるんだろうが、全種気品に満ち溢れている。この先何度会えるかはわからないと思うにつけ、幸せで貴重な旅だった。

2008年7月12日(土)
高山蝶の棲家へ(1)

今年の昆虫シーズンもそろそろ後半戦である。71213日の週末は家族で上高地へ行った。私は高山蝶と高山トンボの撮影が目的だが、息子にとっては目的地にはやや不満があったようだ。昆虫熱には罹っていないからね。
それはともかく、新宿23時発の夜行バスで目覚めると朝の上高地である。寝不足の頭のまま穂高岳への登山道を登る。目的はタカネキマダラセセリ(タカネキ)。今日の体は撮影モード、頂上を踏むことは考えていない。途中、家内と息子を置いて、ひとりで産地を目指す。とはいってもポイントを知っているわけではないので、どこまで登れば会えるか皆目判らない。梅雨空から時々日が射す。写真を撮るには上々の天気だ。
この蝶には一度だけ南アルプス仙丈岳の某沢で会ったことがある。もう30年近く前のことだ。そこはタカネキとクモマツマキチョウ(クモツキ)が同時に舞う別天地であった。登山道はないが、蝶屋が足繁く通ううち、立派な踏み跡ができ、いつしか「クモツキ街道」と呼ばれるようになっていた。その後、豪雨で沢が荒れたと聞いたが、今どうなっているだろうか。
登ること約1時間で樹林帯を抜けると、食草であるイネ科のイワノガリヤスの生える草付きの斜面が現われる(写真上)。いよいよだ。第一号とは思ったより早く標高1900m足らずで出会えた。気温が低いためか、羽化したてのためか、ちょっと飛んではすぐ葉上に止まる。結局この個体は、15分位目の前で少しずつ位置を変えながらポーズを取ってくれた(写真中)。ただ、おとなしすぎて動きのある写真は撮れなかった。その後1時間足らずで6、7頭目撃し、一部カメラに収める。時期が早いせいか、数は決して多くないが、新鮮な個体ばかりだ。「もっと上に詰めてみます」といって登って行った同好の志がいたが、置いてきた家族のことと、できれば今日中に撮りたいもうひとつの蝶のことが気になって、ここで降りることにする。
おにぎりを腹に詰め込んで、今日の宿泊地を目指して梓川沿いに北へ向かう。もうひとつの蝶とはオオイチモンジ(オオイチ)である。この蝶とも再会できれば、学生以来、同じ場所での再会となる。当時そこでは、数え切れない数のオオイチが飛び、私の重たいザックにしみこんだ汗を吸いに飛んできたところを写真に撮ったものだ。
最後のカーブを曲がると木立が途切れ、梓川の河原に沿う瓦礫の下の道となる。期待通りここでオオイチが現われた。大きさといい、飛翔する姿といい、高山蝶の研究家、故田淵行男氏をして「海軍大将」というニックネームを付けさせたのも頷ける。登山道と河原の間にある垂直の石垣がお気に入りらしく、常に数匹が訪れている。道から体を乗り出して、落ちそうになりながら何枚か撮影する(写真下)。その後、獣の糞に飛来した個体も撮ることができた。
その晩、静かな山の宿で満足感に満たされ、前の晩の寝不足も重なって10時間近く爆睡した。

2008年7月6日(日)
鷹ノ巣山行

8月に北アルプスに登る予定があるので、今日はトレーニングも兼ねて奥多摩の鷹ノ巣山(1736.6m)に登った。日ごろの運動不足、標高差1100m余り、非常な蒸し暑さが重なってえらくしんどかった。証拠写真をいくつかあげて今夜は早く寝よるとしよう。

チョウもトンボも少しはいたが、今日は体が山登りモードで、写真はひとつも撮らなかった(撮る余裕がなかったというのが正解)。

写真上:峰谷バス停から1時間ほど登ったところにある奥集落。天界の村と例える人もいるほど山奥の集落。信州遠山郷の下栗を彷彿とさせる。東京都に標高1000メートル近い集落って他にあるんだろうか。

写真中:登ってきた尾根を山頂から見た。

写真下:東京都最高峰雲取山にはガスがかかり始めていた。

2008年7月5日(土)
梅雨明け間近の小山田緑地

今日も仕事の帰りに土曜恒例の小山田緑地に立ち寄る。2日続きの真夏日で、実質梅雨明けといった感じだ。駐車場は初めての満杯である。オオシオカラトンボ(写真上)、ハグロトンボくらいしか飛んでいない。オオムラサキの自生地との標識があるが、まだ早いのか数が少ないのか目撃できない。グラウンドでは蒸し暑い中、少年サッカーの試合が行われている(何と少女もいる)。いやー、子供は元気だ。
本日の感動は最後に待っていた。帰ろうと思い池に沿った歩道を歩いていると、とても大きなトンボが飛び出す。黒と黄色の模様からサナエトンボの仲間のようだ。以前ここでヤマサナエを見たとき、えらく大きく感じたが(5月17日)、それよりずっとでかい。図体の割に小さな複眼、ばか長い後肢から考えて日本でオニヤンマに次いで大きいコオニヤンマである。
しかし写真に収める前に茂みの向こうに消えてしまう。飛び方もゆっくりでずいぶんと貫禄がある。取り逃がしたか、と思うが、幸運を信じて茂みの向こうの消えたあたりに回ってみると笹の葉にちゃんと止まっていてくれた(写真下)。
決して稀種ではないのだが、初めて写真に収める時はドキドキするものだ。こんな年になっても少年のときの感動を呼び起こしてくれる日本の自然は素晴らしい。

2008年6月15日(日)
初夏の石神井公園

久しぶりの土日と続く2連休の週末だ。しかし今日は家にいて部屋の片付けとかして過ごそうと思っていた。でも午前中ちょっとだけ石神井公園でも散歩しようか。自転車なら15分だし、ということで出かけたわけだが、期待以上の成果で午前中丸々つぶすことに、、
公園は蓮の花が満開だ。蓮は昼を回ると花を閉じてしまうらしい。蓮の葉はクロイトトンボの天国だった。しかし岸辺の枝に見慣れない大きめのイトトンボがいる。いや、イトトンボではない。モノサシトンボ(写真上)だ。昨日はオオモノサシ、今日はモノサシ。運が良すぎである。黒とわずかに緑がかった白が清潔感を醸し出している。
三宝寺池を回りながらトンボを探していると、池に張り出した枝に蝶が止まっている。よく見ると何とミドリシジミではないか(写真下)。見上げるとそれはハンノキの大木だった。ここなら早起きして来れば翅を開いた写真を撮れるかもしれない。
池では「生態工房」というNPOの若者たちが池の外来種の調査と駆除を行っていた。この池で問題になる外来種は1.ブルーギル(小魚や水生昆虫を食べてしまう)2. ミシシッピーアカミミガメ(在来種のクサガメ、イシガメを駆逐してしまう)3.カミツキガメ(魚を食べる他、人への危害の可能性)4.ライギョ(他の魚を食べる)らしい。去年から調査しているそうだが、カメの在来種(ほとんどクサガメ)と外来種の比は1:2だそうだ。ミシシッピーアカミミガメのように元々ワニのいるようなところにすんでいる外来種に、日本のおとなしいカメさんたちはかなわないそうだ。このような活動に役立つなら、少しではあるが寄付してもいいかな。
ところで10年来乗ってきた自転車のブレーキワイヤが公園に行く途中に切れてしまった。買い物カゴもぼろぼろだし、タイヤも磨り減ってきた。買い換えたほうがよさそうだが、思い切って車に積める折りたたみ式にでもしようかな。

2008年6月14日(土)
梅雨の晴れ間に「オオ」ものを捜す。

もう20年近く前のことになるが、醤油で有名な野田市に勤務地があった。東京から近いけれど、駅を降りると醤油のにおいが漂ってくるようなのどかな町だった。暇な週末に、国土地理院の地図を基に、ここぞという沼を回ってみることにした。もちろん標的はトンボである。
私の勘は最初から的中した。一つ目の沼の周囲を歩いていると、今まで見たこともない大きなイトトンボが飛び出した。それがオオセスジイトトンボであることはすぐにわかった。利根川水系などに限って分布する貴重種であることを知っていたからだ。そればかりか、足の赤いオオモノサシトンボまで現われた。眼鏡の度があっていなかった私には、一瞬アブでも飛び出したかと思ったものだ。こんなすごい沼が初っ端から見つかるとは!しかしさすがにトンボ屋さん達には知られていた場所らしく、2回目に訪れたときは、胸まで届く長靴を履いて沼に入ってトンボの写真を撮っている年季の入った人に会った。「よくここを探し当てましたね」と感心されたものだ。野田の勤務も短期間で終わり、その後ずっと訪れることもなかったが、忘れていたわけではない。最近の学会誌によるとこの沼の保護対策が進んでいるようだ。
そんなわけで今日は久しぶりの再会を期待して訪れることにした。梅雨の晴れ間は陽射しが強い。もうすぐ夏至だから当然だ。沼の周囲は葦原になっており、オオヨシキリの歌声がかまびすしい。以前と違った点は、この沼のトンボを紹介し、保護を訴える立派な看板が立っている点と、道路わきの草がこぎれいに刈られ、釣り人の残すごみが全然見当たらない点だ(釣りは禁止になったらしい)。オオルリシジミのところでも書いたが、人と生存圏が重なる貴重種は地元の方々の献身的な保護活動によって生き延びているものが多い。小さな沼なのですぐに半周してしまう。セスジイトトンボ(写真下)ぐらいしか見つからず、ちょっと時期が早かったかな、と思って残り半周の葦原の中の細い道に入ったところで真っ赤な足のトンボが飛び出した。いたいた!オオモノサシトンボ(写真上)だ。元気だったんだ、とうれしくなる。その昔もオオモノサシは沼のこのあたり、ごく狭い範囲にしかいなかったことを思い出した。水辺に続く踏跡を辿ると、ちゃんとあの、日本最大のイトトンボであるオオセスジ(写真中)も顔を見せた。途中でまだ学生風のトンボ屋さんに出会う。こんなマナーのいい若い虫屋さんが増えるといいなと思いながら少し一緒に沼を回った。
今日はまだ少しオオセスジには早いようで、青く成熟した美しいオスは見つけられなかった。そう遠い場所ではないのでまたリベンジだ。そのかわり心配していた「オオモノ」に会えたのは収穫だった。

2008年6月8日(日)
冷や汗もののアオハダトンボ撮影行

美しいトンボといえば何種類かすぐ頭に浮かぶが、アオハダトンボもそのひとつである。といってもまだ見たこともないし、目処もたっていなかった。人と生活域が重なるトンボは減少が著しい。ところが昨日ネット上で詳しい情報を見つけた。ただし、いつの記録か見当がつかず、従ってまだその場所が健在かは不明だった。
曇天のなか地図を頼りに埼玉県のその場所へ向かう。川に沿って堤防を歩き始めるとすぐに黒い翅のトンボが飛び出す。ハグロトンボと似ているが大きさといい時期といいアオハダに間違いない。しかし遠くてここではまともな写真が撮れない。少し場所を変えて脇から小さな流れが入り込む地点で何とか近づけそうなポイントを見つける。
メスが二、三匹チラチラ飛んでいる。白い偽縁紋がアオハダメスの証拠だ(写真上)。ヒメジャノメのなどの写真(写真下)を撮って一回りして戻るとオスも来ている(写真中)。慎重に近づいてシャッターを切る。黒い羽の翅脈が金緑色に輝く。異性を呼ぶのか、縄張りを張るためか、時々翅をタテハチョウのように一瞬開く。
夢中になって撮影していた時事件がおきた。近くにいた小学生の男の子たちが大声を上げた。振り返ると一人のサンダルの片方が流されている。流された子が片足裸足で川原を駆け出し、対岸に流れ去るサンダルを追って流れを渡ろうとして、既に膝近くまで流れの中だ。水深は子供の胸ほどはあり、このままでは確実に流される。「危ない。戻れ!」と大声で叫んだ。幸いその子は私の声で我に返ったかのように立ち止まり、残念そうに引き返した。子供は夢中になると生命にかかわる判断もできなくなるようだ。子供だけの川遊びは危険だ。
こんなわけで肝を冷やされる撮影行になってしまったが、交尾、産卵は目撃できず、翅も金色に輝くところはうまく取れなかった。またオスは非常に変わった求愛行動をとるようだが、その観察も宿題として残った。個体数が少ないため、来年以降訪れたとき、また元気な姿に会えるか多少不安を感じながら帰路についた。

2008年6月1日(日)
信州の草原に青い星を追う

デジイチを手にして2年目になる今年、是非撮りたい蝶のひとつがオオルリシジミであった。大型で美しいこの蝶をここでは「草原の青い星」と例えたい。かつては本州と九州に広く分布していたが、今は絶滅危惧種のひとつである。幸い長野県の東御市では、守る会によって手厚く保護されており、時期さえ外さなければほぼ確実に見ることができる。
昨日の寒さで風邪をひいてしまったらしく、ちょっと頭痛がするが、がんばって5時過ぎに起きて上信越自動車道を走る。碓氷峠を越えると空はどんよりと曇っており、昨日の寒さが残る信濃路はまだ気温12度だ。有名なポイントに着くと日が差し始め、もう何人も観察中だ。
初めて見るオオルリはやはり大きい!そして新鮮な個体はぬけるような青が目に痛いほどだ。ここでは地元産の個体を飼育して放蝶しているというが、だいぶ野外で育った個体が根付いてきて、少しずつ見られる範囲も広がっているそうだ。ツバメシジミも若干いるが、オオルリの方が圧倒的に数が多い。食草はクララという背が高くなるマメ科の草本である。女の子の名前のようで、食草までしゃれているが、実はこれは毒草で、根を噛むとクラクラするほど苦いことからついた名前らしい。
撮影に夢中になっていると、前の職場で一緒だったF先生にばったり会う。私の昆虫熱に油を注いでくれた方だ。四方山話をしながら楽しく撮影を続けた。何とか写真は撮れるだろうと踏んではいたが、オス、メスとも新鮮な個体を撮れた上、交尾、産卵までカメラに収めることができて最高の一日だった(写真上はメス)。あとは飛翔写真だが、これはもっと修行を積む必要がありそうだ。目的を果たし、午前中に切り上げてお昼をご一緒して4時前には帰宅できた。午後には頭痛もすっかり消えていた。今日、草原の青い星は一週間分、いや一月分のエネルギーを私に注入してくれた。
ほとんど全滅状態であったこの蝶をここまで復元させた地元の方々に感謝せずにはいられない。保護しなくても人と共存できる日が来ることが理想だが、この現代社会ではちょっとむずかしいんだろうか。

2008年5月17日(土)
春から初夏へ

前回の週末は冷たい雨だった。今日は何とか日が差す土曜日となる。仕事を終えて帰る途中、町田の小山田緑地に寄る。
気候が良いので狭い駐車場はほぼ満車。池にはオタマジャクシやサリガニを採りにきた親子連れが多い。
今日は特に何を狙ってきたというわけではないが、久しぶりのフィールドで気分が良い。林の周りで大きめのサナエトンボを2匹撮影。後でヤマサナエのオス(写真上)とメス(写真中)であったことがわかる。初夏を代表するサナエだ。(メスは「故郷・埼玉のトンボ」のmatszさんに写真判定していただく)
ゴルフ場のある丘を越えて冬の間改修していたトンボ池に向かう。着いてみると唖然。あまりに周囲の植物がきれいに刈り取られており、トンボは一匹もいない。トンボが全然いないトンボ池っていったい、、、。夏、植生が回復して少しでもトンボを呼べるといいんだが。
しかし池から流れ出る小さな小川でカワトンボを見つける。カワトンボは日本特産種であるが、2種類いることになっている。しかし分類はかなり難しく、呼び方は何度も変遷してきた。今ではニホンカワトンボとアサヒナカワトンボの2種ということになっているらしい。因みに「アサヒナ」は「朝比奈」であり、トンボの大御所、朝比奈正二郎先生のことだ。もう30年ほど前になるだろうか、奄美大島でリュウキュウギンヤンマを採集した。当時の図鑑では分布は徳之島以南となっていたので、朝比奈先生にそのことを手紙でお知らせすると、既に先生の持っておられる奄美からの記録をいくつか付けた上で、何かの機会に報告しておくといいでしょうと、一学生の突然の手紙にすぐに返事をいただいて感激した。
話がそれたが、2種類のカワトンボは混棲する場所では標本からも区別は容易ではないらしい。DNA解析が有効のようだ。しかし遺伝子なんて同じ日本人ですら違う部分はいっぱいあるわけで、この2種は本当に生殖行動が別々なんだろうか。素人がこんなことを言っても始まらないが。
さらにカワトンボには翅の色に著明な多型がある。透明翅のオスを追いかけているうち、チャバネで全身白くなったオスが現れた。誘われるように後を追うと、だんだん薄暗い繁みに連れて行かれた。暗いところで見ると、シルバーメタリックのボディーに茶色の翅は何だか機械仕掛けの模型のようで幻想的である(写真下)。前額部はLEDライトのように青く光を反射している。夢中になって撮るうち、足首まで赤土の中に潜ってしまい、スニーカーが悲惨な状態に。帰宅してから家族に呆れられたことは言うまでもない。

2008年5月5日(月)
センチメンタルジャーニー

長野の実家は事情があって現在空き家の状態である。ときどき草取りなんかで帰らないといけない。今回はついでにもう少し南へ足を伸ばしてみた。信州のディープサウスとでも言えそうな伊那谷の最南部は、天竜川沿いで標高が低く、長野県で最も温暖な一帯である。ここにはベニモンカラスシジミ、ヒサマツミドリシジミといった暖地性の興味ある蝶が記録されている。天竜川に沿ってJR飯田線がゆっくり走るが、川沿いは深い谷となっており、主な集落は標高の高い地域にある。
もうずいぶん前になるがここでチャマダラセセリの写真を撮ったことがある。当時、特に貴重種という意識は全くなかったが、最近各地で減少の一途をたどっている。今回ひょっとして、という期待をもって出かけたが、そんなにあまいもんではなく、チャマダラに関しては惨敗だった。簡単に撮影記録を付けておく。
5月4日、先ず向かったのが阿南町深見の池。南信では貴重な自然湖である。池を横断するように鯉のぼりが泳いでいた。着いてすぐ驚いたのが夥しい数のホソミオツネントンボ(写真下)である。冬を越して青く成熟した個体が交尾、産卵をしていた。次にびっくりしたのは、やはり無数のブルーギルである。いつからこうなったのか、浅瀬に数え切れないほどの稚魚が泳いでいた。トンボ好きにとって外来魚は天敵のような存在であるが、大勢の子供たちが楽しそうに釣りをしているのを見ると複雑な気分になる。それにしてもホソミオツネン以外にも数多く飛んでいたシオヤトンボ、ヨツボシトンボ、コサナエ、アジアイトトンボといったトンボはどうやってブルーギルの目をかいくぐって生き延びたんだろうか。
この後、昔チャマダラがいた泰阜村に向かう。ここは物心のつく前後に住んでいた場所でもある。今でも畑や裏山、未舗装の道などの記憶が夢のように残っている。道はずいぶん立派になったが、山深い風景は変わらない。ここではいたるところにウスバシロチョウ(写真上)が飛んでいた。渓流性のトンボはまだちょっと早いせいか、シオヤトンボしか見かけなかった。住んでいた場所が今どうなっているのか確認しようと車でぐるぐる回ってみたが、記憶があいまいなことと、ナビにでる情報が少なくて、結局場所を特定できなかった。夏、ちゃんとした地図を持って再訪しようと思う。
最後に私の気ままな旅に付き合ってくれた家族に感謝。

2008年4月27日(日)
春姫の微笑み

5時過ぎに目が覚めるが頭が痛い。昨夜大学時代の仲間と5年ぶりくらいに再会し、つい調子に乗って飲みすぎたようだ。一瞬、今日はやめようか、と思うが気を取り直して6時頃家を出て中央道を西へ。長野のヒメギフチョウが目当てだ。このポイントには毎年通ってこれで3年目。いつも目撃はできるも、まともな写真は撮れてないので再度のリベンジである。
11時過ぎて雲が切れ始めた。今のうちに腹ごしらえと、サービスエリアで買ったおにぎりを食べ始めたとき1匹目が飛び出す。それから立て続けに10匹近く出現する。まともに食べる暇もないくらいだ。ヒメギフはギフチョウと比べてやや小さく黄色も心もち淡いせいか、ギフを春の女神とするならヒメギフは可憐でかわいい春の姫である。しかしこの姫様、なかなか落ち着かない。よくとまるがすぐに飛び立ってしまうのでまともな写真が撮れない。そうこうするうち12時を回ったらぱたっといなくなってしまった。おまけにネットマンが二人やってきた。自分も以前ネットを振り回していたくせに、今はネットマンが苦手だ。少し距離を置いて待つこととする。
その後も時々飛んでくるが、気温が上がったせいかほとんどとまろうとしない。彼らのほうに飛んでいくとはらはらして落ち着かないので脇道に入ることとする。ここは
2年前何回か目撃した道だ。時間が時間だけに今年もダメか、とちょっと焦り始めたとき目の前を横切る。「とまってくれ」と呟きながら必死に追いかける。藪の中を走っている姿を見られたら、きっと「あの人大丈夫?」と思われるだろう。しばらく追いかけたら元の道にでた。姫は道の先にとまった。多分これがラストチャンスだろう。ゆっくり近づいて見るとコキンバイの花で食事中である。
ついに数は少ないが、何とかさまになる写真が撮れた。3年目にしてやっと姫はちょっとだけ微笑んでくれた。ひょっとしてネットマンが来なかったらこの道には来なかったかも知れず、彼らに感謝すべきかもしれない。

帰りに見えた南アルプス甲斐駒ケ岳(左奥が北岳)
2008年4月20日(日)
今年のトンボの初物は?

今日は午後から晴れるという。三月に行った多摩川の河川敷を散歩することにする。ヒバリが鳴いて、南からやって来たばかりのツバメが飛び交うが、北東の風が吹いて肌寒く、雲も取れない。この風が吹くと関東の天気はぐずつく。
時々雨がパラパラと落ちてくるが、明るいオレンジが美しい春型ベニシジミ(写真上)が迎えてくれる。川のすぐ近くを歩いていたとき、弱々しく何か飛び出した。羽化して間もないサナエトンボである(写真下)。まだやわらかな翅が美しく輝いている。今日ここで見られるとは思っていなかったのでうれしい驚きである。サナエトンボの仲間は種の特定が難しいので拡大したり角度を変えたりしてじっくりと撮影する。結局春を代表するサナエ、ダビドサナエの♀だった。多摩川の、しかもこんなに下流で渓流性のサナエがいるということは、それだけ水がきれいだということか。
結局天気予報は外れ、ついに太陽は顔を見せなかった。
本日のチョウ:モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、キチョウ、モンキチョウ、ベニシジミ、ヒメウラナミジャノメ

[付記2008.5.10] 昨年9月に関東を直撃した台風9号で多摩川が大増水した。もしかしたら幼虫がこの時上流から流され、このような下流で羽化したのかもしれない。それにしてもあんな洪水の中を生き延びたなんて!

2008年4月5日(土)
春の女神に群れる人

春の女神に例えられるギフチョウ(写真上)。早春の短い期間、極めて限られた場所でしか見られないことから蝶愛好家の憧れの的である。産地が人里に近いため絶滅に瀕しているところが多く、関東で確実に見られるのは相模原市のここだけであり、場所を伏せるまでもないほど有名だ。
山の麓に着いたときはまだ肌寒く曇っていた。登り口の民家のおばあちゃんから手作りの梅干を買うとお茶を入れてくれ、ひとしきり世間話をする。小一時間の登りの間に早くも二、三回ギフチョウの出迎えを受け、とりあえず証拠写真を撮る。ギフチョウを見るのはこれが二回目。最初に会ったのはもうかれこれ30年程前、実家の近くの飯田市である。そこも今は地元の方たちによって保護されているものの、決して楽観できない状態のようだ。
この時期この山に登る人は100パーセントギフ狙いである(もちろん写真撮影が目的、採集は禁止)。「いましたか?」「飛びましたか?」で会話が始まる。主語は要らない。山頂から降りてきた人にこう聞くと、「たくさんいますよ。人の方が多いですけどね。」という返事。
確かに山頂には常にギフが飛んでおり、地面に降りると芸能人が現れたかのようにカメラの放列ができる。昼近くなると益々動きが活発となり、激しい空中戦を繰り広げる。そこにキアゲハやミヤマセセリが参戦するとなかなか壮観である。山頂に飛来するのはオスばかりなのだろうか、「女神」のイメージとはちょっと違うような。
首都圏から遠からぬこの産地がこれからも安泰であることを祈らずにはいられないが、なぜか胸躍る感激は湧いてこなかった。何と言ったらいいんだろう、動物園で動物の写真を撮るような、昆虫館にいる蝶の写真を撮るような感じがどこかでしたことと、山頂には花がないため、地面か落ち葉にとまった写真しか撮れないためであろうか。麓の集落でもちらほら見かけ、一度は梅の花に止まりかけたがそのまま飛び去った。登り口の先ほどの民家の庭に、これも春の使者であるスギタニルリシジミ(写真下)が吸水に飛来していた。長いこと一人暮らしのおばあちゃんだそうだが、庭に息子さんの自動車が止まっていて何故かほっとした。

2008年3月23日(日)
早春の使者が続々とデビュー

今日は午後から天気が下り坂のようなので朝早く起きて裏高尾を歩いてみる。8時過ぎに着くと気温はまだ8度というのにテングチョウが元気に飛び回っている。それにしてもテングチョウの多さには驚いた。昔はこんなにはいなかったような気がする。気温が上がるにつれて羽化したての春を告げるチョウたちが飛び始める。まずはミヤマセセリ(上)。そして明るい青が美しいルリシジミ(下)。近似種のスギタニルリシジミを探すも今回は見つからない。
黒っぽいシジミが飛ぶ。コツバメだ。羽化したばかりのコツバメの翅の裏は何ときれいなんだろう。こげ茶色の翅に春の光があたって緑や黄色がかった色に輝いていた。残念ながらシグマのズームレンズを100mmマクロに換えているうちに飛び去ってしまい今日は二度と現れなかった。はやりカメラが2台あったらなあ、とつぶやく。
今月は海外出張のため野山に遊ぶのは今日きりであるが、春の常連に会えて楽しい一日であった。
本日のチョウ:ミヤマセセリ、スジグロシロチョウ、コツバメ、ルリシジミ、テングチョウ、キタテハ、ルリタテハ

2008年3月9日(日)
ルリタテハの日向ぼっこ

今日は日曜であるが所用で出勤しなくてはならない。しかし暖かな春の日に誘われて、仕事を早めに切り上げ昼過ぎからフィールドへ。向かった場所は町田市小山田緑地。ゴルフ場と私有地が入り組んだ複雑な形の公園であるが、町田市民にとっては貴重な緑のオアシスである(駐車場無料、入場無料、サービスセンター有、トイレ有、売店無)。このあたりには水田も残り、私のふるさと信州を彷彿とさせる風景である。ゆっくりと散策するもモンシロチョウを一度目撃したのみ。「こりゃ今日は坊主かな」と思って帰りかけたところ足元から黒い蝶が飛び立つ。越冬後のルリタテハでした。厳しい冬を越したとは思えないほど元気に飛んでは落ち葉で日光浴をしていた。ここはちょうど職場から帰る途中にあり、これから何度も訪れることになりそうだ。

2008年3月8日(土)
08年蝶初撮影

和泉多摩川で小田急線を降りて多摩川べりを歩く。今日こそ今年初物に出会えそうである。気温もだいぶ上がってきた。河川敷のグラウンドから野球をする子供たちの声が響く。枯れ枝を分けながら川岸を進むとキタテハが現れた。1時をまわるとセーターを着ていると汗ばむほど暖かくなってキチョウとモンシロチョウが飛ぶようになる。途中出会った蝶屋さんからツマキチョウを見たと聞く。いよいよ蝶のシーズン開幕である。

2008年3月2日(日)
啓蟄間近

そろそろ蝶が飛び始めるのではないかと思い近場に出かける。まず石神井公園。まだ日が翳ると寒い。カモ類もまだ北に旅立っていないようだ。結局チョウもトンボも見当たらず。「クルル、クルル」という小さい泣き声が聞こえたので捜すと三宝寺池の浅瀬に10匹ほどのヒキガエルが集まり産卵している模様。東京都区内では池から遥か離れた住宅地でヒキガエルを見かけることがあるが、自分の生まれた池がどうしてわかるのだろうか。
午後の井草の森公園では菜の花が満開。しかしやはり蝶にはまだ早かった。

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