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トンボ同士の捕食

 トンボは肉食であり、様々な小虫を捕食する。時には他種や同種のトンボが捕食の対象となる。
 そのような例を自験例を含め、書籍、インターネットで集めてみた。未収録の例が多数あると思われるが、今後時期を見て追加、更新していきたい。尚、インターネット検索では、写真が掲載されており、種の同定が可能なものに限ることとし、数が多いためURLの記載は省略した。捕食者は雌雄の区別を検討したが、被捕食者は雌雄の判定ができない例も多いため、一括掲載とした。
 図1は捕食者と被捕食者の関係を線で結んだものである。掲載順は文献1に準じた。捕食者の種類数は被捕食者の数より少ないことがわかる。

     
   図1 赤線は同種の、青線は異種の捕食関係を表す。2件以上見つかった関係は太線で示した。

 捕食者として観察例の多い種類を表1にまとめた。

順位 捕食者 件数 雄別件数 被捕食者種類数 文献等
1 シオカラトンボ 29 ♂19,♀10 12 2,4,6,7,自験例,他
2 アオモンイトトンボ 8 ♂3,♀5 6 2,3,4,自験例,他
3 ギンヤンマ 5 ♂2,♀3 2 1,他
3 タイワンウチワヤンマ 5 ♂5,♀0 2 4,5,他
3 コオニヤンマ 5 ♂3,♀2 5 5,他
6 キイトトンボ 4 ♂2,♀2 3 1,3,他
7 アオヤンマ 3 ♂3,♀0 3 1,3,6
                       表1 上位捕食者
 これらの種類は特に攻撃性の高い種と思われるが、一部は普通種のため観察件数が多いことも影響している思われる。なかでもシオカラトンボの件数が圧倒的に多く、12種ものトンボを捕食している。同じシオカラトンボ属で数も多いオオシオカラトンボの捕食例が見当たらない点は興味深い。
 捕食される側の観察例の多い種類を表2にまとめた。

順位 被捕食者 件数 捕食者種類数 文献等
1 ウスバキトンボ 10 5 4,6,他
2 シオカラトンボ 8 1 2,他
3 チョウトンボ 6 3 5,他
4 ギンヤンマ 4 1
4 クロイトトンボ 4 2
6 ノシメトンボ 3 2
6 マユタテアカネ 3 2 7,自験例
                       表2 上位被捕食者
 ウスバキトンボが多いのは数が圧倒的に多い点、風を利用して滑空するように飛ぶことから捕獲されやすい点が影響していると思われる。シオカラトンボ、ギンヤンマの被捕食観察例は全てが同種による捕食である(共喰い)。チョウトンボはひらひらとゆっくりした飛翔のため他種から狙われやすいと思られる。
 捕食者と被捕食者のサイズを比較したものが図3である。体長は文献1を基にした平均値を用いた。

            
               
図3 捕食者と被捕食者のサイズの比較
 大部分が自分より小さい種を捕食しているが、小さな捕食者(イトトンボ科)は自身より大きな種を捕食することもある。[例:アオモンイトトンボ→ベニイトトンボ、アジアイトトンボ→ホソミイトトンボ]
                        文献
1 尾園暁ら, 2017. ネイチャーガイド 日本のトンボ. 文一総合出版
2 喜多英人, 2021. 東京都のトンボ. いかだ社
3 山本哲央ら, 2009, 近畿のトンボ図鑑. いかだ社
4 尾園暁ら, 2007. 沖縄のトンボ図鑑. いかだ社
5 杉村光俊, 1986. 昆虫の研究 トンボの楽園. あかね書房
6 杉村光俊ら, 2008. 中国・四国のトンボ図鑑. いかだ社
7 井上清ら, 2010, 赤トンボのすべて. トンボ出版
8 神奈川県立生命の星・地球博物館, 2012. 大空の覇者 トンボ

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